自由ーフリーダムー

オリジナル小説部屋。ときどき二次創作。本とテレビが好き。

小説家を目指すアマチュア作家の修業場所

ご挨拶。

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こんにちは('ω')ノ! 

桐原歌子(きりはら うたこ)と申します。

ようこそ花凜文学27’(かりんぶんがく27’)へ!

  

***以下、お読みくださいませ(*'ω'*)*** 

 

*こちらのサイトはプロの作家になりたい小説家志望者が個人で運営するブログであります。

*完全なる個人営業のため、責任も権利もすべて桐原にあります。

*創作する物語はすべてフィクションです。実在する団体や事件などとは一切関係ありません。

*雑誌や漫画などの感想を書くときは、雑誌名・出版社・記事を書かれた方のお名前を引用元として抜粋致します。

 

☆桐原の特徴☆

 

季節の変わり目、大きな天候の変化にかなり弱いです。そのため、当ブログの更新はかなり不定期になります。特に春から梅雨前線が来るまでの時期は冬眠が必須)

  1. 「梅雨明けです!」のニュース速報と同時に長い眠りから目覚めます。……と思ったら秋雨前線でまたこけます(^^;) 扱いづらい身体ですが、ご理解のほどよろしくお願いします。
  2. 調子がいい時と悪い時の差が激しく、悪い時期はブログから遠ざかっています。桐原自身気をつけていますが、もしも「ん?」と読者様に違和感を抱かせてしまった場合、謹んでお詫び申し上げます。

 ***それでは、お楽しみください~(^_^)***

 

 

☆活動中のSNS

 

『(*‘ω‘ *)誰でも見ることができます。』

Twitter・heartnight16

 

*ユーザー登録必要(無料)*『(*'ω'*)登録しなくても閲覧はできます。』

カクヨム・現在こちらで一人編集長(笑)をしております。

花凜文学(@karintou9) - カクヨム

 

note・クリエイター活動はこちらでやっております。

 

note.mu

 

↓「つきみ詠子」で作り直しました。('ω')ノ

小説家になろう

 

 

 

連絡先

messenger.of.kanata12325*gmail.com

(*を@に変えて送信してください)

 

作品のご案内。

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*作品集*

 

長編小説

1 Mary the phantom (マリー ザ ファントム)➖大怪盗魔梨花

異世界ファンタジー」「女怪盗」「宝石強盗」「盗賊狩り」「22世紀の仮想日本」

カクヨム小説家になろうにて連載予定*

 

2 Missing White (ミッシング ホワイト)

異世界ファンタジー」「パワーストーン」「宝石」「アンティーク・ドール」「人形」「ぬいぐるみ」「女主人公」「少女小説

カクヨム小説家になろうにて連載予定*

 

3 空から天使が舞い降りる

「学園シリーズ」「青春」「恋愛」「学校生活」「キラキラ≠楽しい」「屈折と不安」「思春期~青年期」「十代小説」

☆構想中☆

 

4 ぼくの名を呼んでほしい

★「空から~」と同じ世界観の物語です★

ブログ中心に執筆いたします。改題や改稿を繰り返してしまいますが、ご容赦を。

 

5ARISA HANSEL 《アリサ=ヘンゼル》

 ARISA-Crescent 《アリサ=クレッセント》

タイトルまだ考え中。

途中でお話が枝分かれする可能性があるため、色々な投稿場所にて執筆します。

戦うお姫様小説です!カクヨム小説家になろう、ブログにて連載いたします。

 

短編小説

小説家になろう」にて掲載予定。

 

連作シリーズ作品(群像劇・オムニバスなど)

小説家になろう」「カクヨム」にて発表予定。

 

詩文・散文・ポエム

ブログのみ。 

 

エッセイ・日記

ブログのみ。 

 

雑誌(芸能・音楽関係)などの感想

裏サイト「ヲタ活。」または「花凜芸術」にて発表予定。 

 

本(小説や漫画など)の感想

 こちらで上げる予定です。

 

ブログの趣旨を変更します('ω')ノ。

お話に行き詰まった九月。

 

 

どんな話を書けばいいのかまっっっったくわからなくなってしまった(;´・ω・)。

 

うわー、話が思いつかないよ~~( ;∀;)。

 

ひとまず今ブログにアップしているやつ、一旦すべて更新停止です泣。

みんな申し訳ない……(´;ω;`)。

 

これからここは日記というか、読書やらポエムやら雑記みたいな感じでまったりやろうかと思います。ろくに話も進まないで何やってるんだ私(;´・ω・)。

 

とりま細々と生きております……。

 

ご報告でした!

オススメ作家さんの紹介。

さくら舞い散る中に忘れた記憶と

 

君の香り戻ってく~る(^^♪。

 

 

どうもお久しぶりです。桐原です。タイトル関係ありません(←オイ)

連日猛暑が続きますが、みなさま体調管理にはじゅうぶんご注意を(;’∀’)←お前が言うな。

 

 

今日は本を紹介させてください。( *´艸`)

 

 

まず、今日の出版業界にて、なくてはならない存在の作家、辻村深月先生のデビュー作を!

 

 

冷たい校舎の時は止まる(上)(下)第31回メフィスト賞受賞作

 

上巻850円+税。

下巻850円+税。

 

あらすじ(裏表紙より抜粋)

雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2か月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう――。

 

 

 

 

 

 

まず言いましょう。長ぇ!!!!←

いやもう原稿用紙千枚書いたんすか?って言いたくなるくらい読んでも読んでも終わらない(笑)でもそこで戸惑うなかれ。めちゃめちゃおもしろいぞ。

 

まず導入部。すっごい寒い景色が文章を読んだだけでありありと浮かんできて、読んでるこっちも震えそう(←)。体感温度の描写というか、気温を感じさせることが上手だなと思いました。

 

作中の登場人物は8人。ちょっとキャラの数が多いなと初めは思ったのですが、8人ちゃんとお顔の特徴まで妄想できてしまうほどキャラが立ってます!

(私は昭彦が好きです~。)

 

そして、展開が進むにつれ、物語はどんどん不穏な気配になり、8人の精神状態も追い詰められてきます。

 

が、しかし、この作品には「全員疑心暗鬼になって互いに疑いあう」といった陰険な輩はいません。話の展開上、みんなは互いを疑うのですが、そこには「友だちを信じたい」というピュアで無垢な精神がとても強くあります。(私は、そこが編集部に評価されたのではないかなと思っております。)どれほどホラーな目に遭おうとも、「犯人はあなたではない」と、己の弱い心と葛藤し、みんなでここを出ようと模索します。その真摯な態度に心を打たれます。

 

私が辻村先生の作品で好きなのは「登場人物の真摯さ」と「世界観の息苦しさ」です。

「息苦しい」というとネガティブに聞こえますが(;’∀’)、読むと胸がぎゅーっと何かに掴まれるような「痛い!」みたいな感覚に襲われるけれど、それを登場人物の、その問題に対して必死にぶつかっていく、抗おうとする、その姿勢が素晴らしいなと思うのです。「話つらいけど、登場人物がんばれ!」と応援したくなります。

 

「息苦しい」<「キャラを応援したい」

 

この図式が成り立つかなと。

 

未読の方はぜひともチャレジを!

辻村作品はほかにも素敵な作品がたくさんありますが、やはりデビュー作は一番思い入れが深いです(*´▽`*)。十代から三十代ほどの世代の方にオススメです!

 

 

さてさて、二番目の辻村さんに行きますよ。←

 

まだ多くの方には知られてないかなと思うのですが、この方は今後伸びると思います!

 

螺旋時空のラビリンス(らせんじくうのらびりんす)

 

辻村七子 著

 

(550円+税)

 

集英社オレジ文庫から刊行された2014年度ロマン大賞受賞作です。

 

あらすじ(裏表紙より抜粋)

時間遡行機(タイムマシン)『アリスの鏡』が開発された近未来。

喪われた美術品を過去から盗み出す泥棒のルフは、至宝イースターエッグを盗み19世紀パリに逃亡(ロスト)した幼馴染、フォースを連れ戻すことに。だが彼女は高級娼婦(クルティザンヌ)の「椿姫」ことマリーになりすまし、しかも不治の病を患っていた。頑なに帰還を拒否する彼女が秘めた真意とは!?

 

 

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)

 

 

 

イムループミステリーです。

主人公の一人称視点で物語は始まります。言葉のチョイスが面白い(笑)。主役のルフの語りがサバサバしていてとっつきやすいし、ちょっと漫才のツッコミ役みたいな文体が笑えます(*´з`)。思わず「ププッ」となってしまいます。

 

またルフのやられ役感がイイ(笑)。ヒロイン、フォースの方が何枚も上手で、踏んだり蹴ったりなんですが、それも読んでて気持ちがいい(←)。

 

この作品の魅力は、フォースで成り立っていると思います。それほどにフォースが強くて凛々しくて、かっこいい!! ザ・イケメン女子です!(笑)

 

あとこの二人の、男女の「相棒」感、いいなあ……( *´艸`)。

 

今読まれるべきエンターテイメント作品です!

未読の方はぜひ~。

 もし辻村七子ワールドにハマったら、「宝石商リチャード氏の謎鑑定」シリーズもオススメです。

 

 

宝石商リチャード氏の謎鑑定 (集英社オレンジ文庫)

宝石商リチャード氏の謎鑑定 (集英社オレンジ文庫)

 

  

猛暑が続きすぎて、なんかもう暑くて泣くレベルですが( ;∀;)、ようやく九月になったことですし、みなさんともに乗り切りましょうね!( ;∀;)

 

 

 

取り急ぎ、桐原でした!!

 

星に願いを

今週のお題「星に願いを」

 

   星に願いを 

作 桐原歌子

 

 昔から流れ星を見たことがない。

 星に祈ったこともない。

 私の将来の夢は作家だ。

 作家を目指すようになったきっかけは、今でもはっきりと覚えている。

「あんたの作品、すごい。あんただけが『小説』としてきちんと成り立った物語になってる」

 小学校三年生の時、授業の一環で「詩や小説を書こう」というテーマがあった。

 みんなわりかし乗り気だった。そこまで悪いクラスではなかったし、国語や算数の授業よりは楽しそうな気がしたからである。

「ウソを書いてもいいの?」

 クラスメイトが質問した。

「小説は、ウソで成り立っているの。物語は想像の世界なんだよ」

 みんなで当時は珍しかったパソコン室に向かった。まずはワードの立ち上げ方から学んで、書式の保存形式を習って、ドラッグの方法を知って……。

 九歳の私にとって、テレビともゲームとも違う四角い箱の向こうの無機質な画面は、真っ白な異世界だった。

 いざ小説を書くに至り、脱落者は出なかった。みんな思い思いに自分の言葉で自分の空想を作り出し、パソコン室には生徒同士で画面をのぞき込む光景が広がっていた。

 出来上がった私の小説は、三枚から五枚程度。とくに先生や友だちからは何も言われなかった。みんなで物語を読みあう授業はなく、その代わり先生が一冊の文集にまとめて印刷してくれた。

 その文集は、家のどこかに隠れたままだ。

 何年たっても社会人になっても、あの小学校の授業は鮮明に思い出すことができる。国語も算数も何ひとつ思い出に残ってないのに、あの小さな椅子と机、防災頭巾の赤色は記憶のかけらに残っている。

 私は出来上がった文集を母に見せた。

 しばらくしてから、母は私をリビングに呼び、ちょっと興奮した顔で言った。

「あんたは小説の才能がある」

 母がこんなに喜んだのは、九歳の私にとって自分のこと以上に大きな出来事だった。

 それ以来、私は中学に上がっても高校生になっても、書き上げた小説を母に見せている。読書家の母は厳しかったけれど、やはり最後には「才能がある」と嬉しがってくれた。

 大学でコケて人生でいちばん迷惑をかけた日も、家に引きこもってやっていたことは、小説を書くことだった。

 私にとって小説とは、母との思い出であり、私自身のルーツである。

 今はまだプロになれるかもわからない。ただ、私の半身とも呼べるほど近くなった「小説」とは、これからもつかず離れずしながら、時には醜くぶつかり合って、時にはどちらかが片方を食い殺して、それでも、這いつくばりながら、白い画面に杭を打ち込むように文字をつづるのだろう。そういった日々が一生続いていくだろう。

 やっぱり文字を書いている時が幸せだ。そう実感しながら。

 だから、流れ星に願いをかけるとしたら、私の祈りはただひとつ。

「小説をたくさん書けますように」だ。

 

 終わり。

7月になったからじゃにーずにハマろう。

こんばんは!(;’∀’)

 

前回のブログに「赤髪の白雪姫見るんだ!( ..)φメモメモ」って載せちゃって後で自分の壮大なる勘違いに落ち込んでいたアホです、こんばんは!( ;∀;)

 

さてさて、世間はいろいろ動いてますね。

 

4月期のドラマは「花のち晴れ」「コンフィデンスマンJP」「デイジー・ラック」などを見ていました~。

 

とくに4年ぶり(マジか)のデビューとなるジャニ’sさんたちの新グループ、その名も「KingPrince」がイイですね~。「キンプリ」というんですね!

うちの母がさっそく紫の子にハマりそうです笑。

岸優太」くんというのですね。かくいう私も岸くんのちょっとあどけなくてまだまだ自信がなさそうな困り顔がツボです(*´▽`*)。カワイイなあ~。

 

そして嵐ファンの私、VSにキンプリちゃんたちが出てきたことをきっかけに持てるヲタクの力を使ってメンバーちょっと覚えましたよ!!←BBAですがよろしく!( ;∀;)

 

やっぱ、平野紫耀(ひらの しょう)くんですよね。(*´▽`*)

 

漢字変換で出てこないもんね。←(違うそこじゃない)

 

何なら辞典引っ張ったからね。←←

 

 

読み:むらさき。し。

意味:赤と青のまじった色。帝王、神仙、道教などに関する事物に関する語。むらさきは、もと帝王・神仙の色とされていたことに基づく。

 

耀

読み:ヨウ(エウ)

意味:かがやく。また、かがやかす。かがやき。ひかり。あきらか(明)。

 

参照元:新漢語林初版(部屋にあったヤツ)

 

特に意味はない。←(ヒマか)

 

 

こうして人はどんどん若い方へ夢中になっていく……。←

 

しばしジャニ’sさんたちの若手グループを追うことになるかな。

今はセクゾちゃんのCDとキスマイくんたちのアルバム用資金を貯めてる桐原でした。

 

次回は小説がんばる!!( ;∀;)

 

 

 

2018.7.3(火) 桐原歌子

今月も100pv突破しました!!

みなさまお久しぶりです。m(__)m

 

なんとありがたいことに、亀更新著しいこのサイトが今月も100PVを突破いたしました~~!!(*´▽`*)わ~い、やったやった~。

 

これも辺境ブログに来てくださるみなさんのおかげですm(__)m。本当にありがとう……。

 

現在は「エブリスタ」「星空文庫」をちょこっと更新したぐらいですかね~。

なんかもう本気で仕上げたい欲が高まりまくって、社会に出たくないや!(^^)!←出ろ。

 

あと、お話しさせていただきたいことがあるのですが……、

みなさん「カクヨム」途中で逃げてごめんね(;_:)。

これからは根性直して、気持ちが整い次第、またトライしてみたいと思います(泣)。

 

 

さてさて……、

 

いよいよ春のドラマも終わり、夏ドラマの季節ですね!!

 

今年の夏は「赤髪の白雪姫」見るんだ!

 

「赤髪の白雪姫」TVアニメ公式サイト

 

あとは出演が決まってる戸塚祥太くんと伊野尾慧ちゃんのドラマ見ます💛

伊野尾慧&戸塚祥太が宇宙人の兄弟に、「トーキョーエイリアンブラザーズ」ドラマ化(コメントあり) - 音楽ナタリー

 

ほかにもアニメとドラマで引きこもりの夏を盛り上げていくぞ~。

 

取り急ぎ報告まで!!

 

夏もがんばります!!m(__)m

 

ぼくの名を呼んでほしい【Please, Call my name……,】3

 red-pink16.hatenablog.com

 

red-pink16.hatenablog.com

 

 第3話。女の子が出てきます。栗名君が動きません(;'∀')。

 

+第3話+ 「追いかけてほしかったのに」

 涙のメリーゴーランド。愛情が空回りする……。

 どうすればよかっただろう。

 YUI「Merry-Go-Round」より。

   ***

 

 岡崎永美《おかざきえみ》は、今日も手を繋いで登校する馬場直純と溝ノ口当《みぞのくちあたる》の仲睦まじい様子を眺めていた。

「いや、あれはないでしょ」

 永美は半笑いを浮かべた。隣には大親友の藤木結花《ふじきゆか》。二人は腕を組んで二階の窓から下を覗いている。

「それじゃあ栗名はどうなんの?」

「佐藤君にアプローチされた人よね?」

 永美と結花の後ろから、女子二人組が話しかける。神崎梗《かんざききょう》と、速水薫《はやみかおる》である。

「俺は信じねえからな!!」

 金切り声を上げたのは佐々鈴蘭。彼は最近、五人組という奇数の人数のせいであぶれがちなのだ。そして、なぜか女子のグループに入っている。

「あんたのクラス、一組でしょー」

「二年なんてどれも一緒じゃねーか」

 鈴蘭は全く可愛げのない台詞を吐き、堂々と女子の輪に入り込んで、売店の焼きそばパンと牛乳を食らっている。

「まあ、一、二、三組までは普通科だからな」

 梗は笑って、桜色のネクタイを締め直した。ここは男女両用の制服が用意されてあるから、自分みたいな性別の半端者には都合がいい。と、梗は毎日軽い口調でみんなと接している。

 鈴蘭は梗のことを気にかけている。

 永美には、それが分かっていた。

 

   +🌸

 

 昼休み。

 永美は部室の扉を開けて、旧友に助けを求めた。

「理衣子《りいこ》さん、お願いします。あなたの学級委員長能力であの忌々しいチビ男をやっつけてください」

「何言ってんのよ。私にそんな力あるわけないでしょ。大体、佐々君は成績優秀、品行方正ではないけれど学期末テストにはなくてはならない存在なんだから。私はあの人をライバルと認めてるの。下から数えて七番目のあなたの相手をしてる暇ないわよ」

「ほら! そういう可愛くない文句垂れ流すから男子が寄ってこないんだ!」

「私に男なんていりません。佐々君がライバルだったらいいの」

「佐々鈴蘭は男だから!」

「私の中では彼の性別は中性です」

 綾本理衣子《あやもとりいこ》は少し妄想が行き過ぎる女の子だが、一応、これでも長いこと親友をやってきた仲である。強気で勝ち気で生真面目な彼女なら、どんなに憎たらしい男子でもその達者な口で黙らせることができるのに、今、理衣子は永美の天敵に恋心――なのかは不明だが――夢中なのだ。

「ひどい。誰もあいつを倒してくれないなんて……」

「他力本願が一番みっともないわよ。成績でぶつかり合いなさいよ」

「それこそもっと駄目でしょうが!」

「何よ、男子と女子が成績以外でぶつかり合えるものなんて、ほかにないでしょ」

 永美は理衣子に言われて、口をつぐむ。本音を言うなら鈴蘭と昭和の漫画レベルの殴り合いをしたいと思っている。だが、ああ見えても力は強いに違いない。自分なんか一六〇センチにも届かないというのに、鈴蘭は五センチ高い。不満だ。男女の差は不公平だ。身長も、体格も、筋肉の量も。

「そうだ」

 永美はいい案を考えついたというように目を見開いた。

「結花ちゃんを使って栗名を誘惑したらいいんだわ」

「何でその発想で栗名君に行くの? 彼は佐藤君とお熱でしょ」

 理衣子が白い目をこちらに向ける。

「違う、違う。佐々の永遠の友人は栗名だよ。美少女ランキング二年連続一位の結花ちゃんが迫ってくれれば、栗名も落ちるって。あいついい人そうだし、簡単に騙せそうだし、そしたら佐々のデリケートなハートは傷ついて、理衣子、あんたのもんになるじゃん」

「女って怖い」

「私たちは悪魔の双子よ」

 双子、というのはもちろん比喩である。永美と結花はたいへん意地の悪い性質で有名なのだ。

(もはやどっちが嫌われてるんだか)

 むろん、理衣子も人のことは言えないが。

 

   🌸

 

 永美は行動を起こすのが早い。言葉を選ばずに言うとこらえ性がない。昼休みの時間に理衣子を訪ねた後は、さっそく結花と共謀を図っていた。

「栗名君よりは佐々君の方が扱いやすいから、そっちにしよう」

 結花は花冠が似合うようなお顔で、目をキラキラと輝かせている。悪戯したくてしょうがないのだ。男はみんなこの子に騙されていく。

「栗名君はよく分からない人だから」

「結花ちゃんでも無理っぽい男子がいるんだ」

「まあね」

 ふうん、意外だな。理衣子はそう思い、永美に目をやる。永美もまた理衣子に同じ視線を送る。

「栗名君はミステリアスな人だよ。目が語ってるもん。俺の心に入らないで。てね」

「結花ちゃんすごいなあ。私なんか全然考えなかったわ」

「あんたは男に興味がないだけでしょ」

 理衣子の言葉に、それもそうねー、と永美は答える。結花は体育館の開放口から見える男子の球技を観察している。ただいま午後の六時限目だ。時刻は三時過ぎで、空はすでに赤の色を濃くしている。

「栗名、行け!! 君の情熱を空に爆発させるんだ!!」

「お前はなぜ体育の授業に出ない!?」

 小さな第二グラウンドでは佐藤涼と体育教師が大きな声で怒鳴り合っている。永美と結花と理衣子の三人は「それにしてもあいつは不思議よね」と口を揃えた。

 きゃー、と今度は体育館に女子の黄色い声が上がる。「ああ、神崎ちゃんがサーブ決めたんだ」「バレーボールは彼女の独壇場ね」永美と結花がはしゃぐ。最後の対戦をしていた二チームは神崎梗のグループに軍配が上がったようだ。

「薫さん、負けたの……」

 理衣子は誰にも聞こえないように声を押し殺し、つぶやいた。

 

   🌸

 

 理衣子は永美と結花の二人を好きだ。

 もはや愛していると言っても過言ではない。

 綾本理衣子は女の子が好きだ。

 女の子の甘い匂いが好きなのだ。

 

   +🌸

 

 ゴールデンウィーク、と聞いて嬉しがる人間もいるけれど、理衣子にとってはただのいつもの休日である。ちょっと古書店でも覗いてみるか、そんな程度だ。

 理衣子はほぼ毎日書店で小説や詩を物色している。学校帰りの駅ナカ書店など、理衣子にとってみれば大宮殿だ。大人から見れば大げさ過ぎるかもしれない。けれど、理衣子はまだ親から保護されなくてはならない。十七歳。大人になるには、少し早い。

(目ぼしいものはないわね……)

 木立学園からのスクールバスを降り、理衣子は多摩センター駅啓文堂書店へ出向いた。多数の小説が並んであったが、今一つ自分の心にピン、と引っかかる琴線のような輝きを持つ物語がない気がする。あまり大好きな作家ばかり追い続けるのも、同じ話のネタが生まれるばかりで脳の刺激によくないと、著名な誰かが言っていた。

(多摩センター、もう少し頑張ってほしいわ……)

 地元であるだけに、ほかの都心部より蔵書数が足りないのを、理衣子は密かに気にかけている。

「あ」

と、理衣子は声を上げた。学年一位の「爽やかイケメン君」が、見知らぬ女子を連れて漫画コーナーにいたからだ。

(家族かしら……)

 栗名の隣にいる女の子の髪は赤かった。栗名は赤毛だ。そこまで目立つ赤色ではないが、日本人は黒髪だらけなので毛色が違うとそれだけで目立つ。

(私は気にしないんだけどね)

 本棚の陰に隠れ、理衣子は連れの女子をじっくりと観察する。栗名の髪より少しオレンジの色合いが強いな、と思った。光り輝く赤毛である。しかし「赤毛のアン」の作中で出てくる「ニンジン色」と呼ばれるほどの色ではないなと思った。

 理衣子は栗名と彼女を見続ける。栗名の赤毛と、彼女の赤毛

(やっぱり栗名君の方が「いい」色だわ。赤って目立つけど、惹きつけられる強さがある。今度の新作は栗名君を題材に使おうかしら)

 じっと眺めていたおかげで、理衣子は栗名たちがとっくにこちらの無遠慮な視線に感づいていることを失念していた。

「あのー、綾本」

 栗名がパッと振り返り、苦笑いを浮かべながら近づいてくる。理衣子は少しだけ身をすくめる。

「あら、栗名君」

 背筋を正し、理衣子はよそ行きの口調で返した。

「ええと……、部活?」

「そうよ。演劇部」

 栗名の隣の女の子は、理衣子の顔をちらちら見上げ、恥ずかしそうに視線をさまよわせている。

「ぶしつけに見ていてごめんなさいね。演劇部の脚本づくりに苦労してるのよ」

「はあ」

「何しろ、うちには岡崎永美と藤木結花がいるからね。あの性悪女ども、まだあなたに悪さをしていないかしら」

「悪さ?」

「いえ、こちらの話」

 理衣子はふいっ、と顔をそらした。ということは、結花たちはまだ作戦会議中なのか、あのコンビにしては手を出すのに時間がかかっている。

「ところで、妹さんかしら。かわいい子ね」

「おお、サンキュー。ほら、褒められてるぞ、お前」

 女の子はまたちらっ、と理衣子を見上げる。すると蚊の鳴くような声で「……ありがとうございます」とつぶやいた。

「人見知りが激しくて、こいつ」

 栗名は困ったように妹の頭を撫でる。

「何歳差?」

「六歳」

「それは大きいわね。ほとんど父親の気持ちでしょう」

 栗名の顔が一瞬、スッと影が差したように曇った。あら、どうしましょうと理衣子が対応を考えている間に、栗名はさらっと話題を変えた。

「演劇部の去年の演目よかったよ」

「あら、どうもありがとう。最近はネタが枯渇してしまってね。軽いスランプかも」

 理衣子は演出家だ。『木立学園』を選んだのも、ここが芸術ごとに強い学校だからだ。

「そうか? 去年のやつ、完全オリジナル作品なんだろ? 迫力あったよ。お前、才能あるんじゃないか?」

「そんな風に言われると、調子に乗るわよ」

「綾本は少しくらい調子乗った方がいいかもな」

(……さすがに栗名君は言うことが違うわね)

 高校二年になると、男子は急に大人になる。いつまでも成長しないやつがいる一方で、教室の箱からすでに将来を見据え、羽ばたく準備を始める、自分たちよりずっと大きな背中を見ることになるのだ。

「栗名君、あなたはどこへ行くの?」

 理衣子は栗名の理知的な目を見て、言った。

「え」

「進路の話」

「ああ、そっちか」

 栗名の目はほんの少し怯えた色を持っていた。

「俺は……、俺はまだ明確な目標が見えてないんだ。大学行けるかどうかも曖昧で。学費の件で」

「そうなの」

 貧乏な学生は山ほどいる。木立学園だって、就職する道を選ぶ生徒が一割弱いる。今の時代に演劇を目指す理衣子につらく当たる連中もこの先出るだろう。

「栗名君は、模試の結果、佐々君と競っていたでしょう。何も不安に思うことはないんじゃない?」

「うん」

「私は演劇学を学べる大学を片端から調べてるの」

「綾本らしいな」

「栗名君は、何を目指してるの?」

 彼の目が再び動揺する。

「目指しているものが、あるんじゃないの」

 理衣子は強く出た。彼をずっと見続けていたこの数か月。栗名には、ある「秘密」がある。

 栗名は、夢を、持っている。

 理衣子が想像する限り、おそらく、途方もない大きな夢。

 誰にも言えないほどの切実な思い。

 この人は持っているはず。

 理衣子はそう思った。

 栗名の腕にくっついている妹が、帰りたそうに彼の服の袖を引っ張り始める。

 「……もう行かなくちゃ。じゃあな、綾本」

「……ええ」

 ぐずる妹の頭を撫で、栗名は理衣子に背を向けた。

 彼が去っていく。

 理衣子のそばから。

 

「俺は、詩人になりたい……」

 

(……ん?)

 空耳のような気がして、理衣子は自分の耳に手を当てた。普段妄想ばかりしているこの頭はとうとうおかしくなったか。いや、違う、これは。

(……出てきたんじゃない?)

 理衣子はにやり、と口角を上げた。

 鞄からスマホを取り出す。

 三回目のコールで相手は出た。

『……何? 綾本さん』

「柳《やなぎ》。出番よ」

 物語が降りてきた理衣子に怖いものは何もない。

「今やってるやつ、全部なしにするわ。一日で書き上げるから、役者陣にそう伝えて」

『…………はあぁっ!? 脚本ボツにするってこと!?』

「ほかに何があるのよ。ゴールデンウィークあと三日あるし、大丈夫でしょ」

『永美と結花がまたヒステリー起こすわよ!』

「その相手はあんたにしかできないわ。この伝統校の演劇部に泥を塗るような真似は絶対にしない。すごい大作なのよ」

 あんたに才能がなかったら今ごろ殺してやるんだからっ! と、電話は唐突な勢いでぶち切れた。スマホをしまうと、理衣子は今までにない高揚した気分で、本屋から改札口を抜けて新宿行きの電車に滑り込んだ。

 

   つづく。

ー幻影獣― 地球事変 げんえいけもの ちきゅうじへん 二

 

red-pink16.hatenablog.com

 

序章 二

『いつでもあなたを見守っています。あなたの元に仕え、あなたの行く末を案じております。

 それが私たち、『守獣《しゅじゅう》』の役目ですから――――』

 

*少年*

 雪が、降っていた。

 粉雪だった。

 ふわり、ふわりと落ちていた。

 白い花びら。

 真冬の空。

 嬉しそうに見上げながら、一組の夫婦が歩いている。

 妻は女の子を抱いている。

 夫は小さな男の子に向かって、「早く来なさい」と優しく言う。

 男の子は一人、雪かきの行われていない新雪に、手形や足跡をつけている。

 男の子は父親の声に気づき、家族の元へ走るが、滑りやすい地面に足を取られ、転んでしまう。

「まあ、大変」

 母親は心配そうに息子を見つめ、駆け寄ろうとする。と、腕の中の女の子が止めた。

「私が行ってくる」

 女の子は、するりと母親の手から降り、弟を助け起こしに行く。

 弟はすでに自力で起き上がっている。

 しかし、転んだ時にズボンの布が擦れて、皮膚が傷ついてしまったらしく、痛そうに膝をさすっている。

 自分は男の子だから、これくらいのことでは泣かないのだ。

 心に言い聞かせても、じん、と響く膝の痛みに耐えるのは、子どもにとって至難の業だった。

「雪夜《ゆきや》」 

 涙をぐっと我慢していると、姉の手が、ポンと頭に乗った。

 顔を上げると、自分より少し背の高い姉の姿があった。

「雪花《せつか》」

 名前を呼んだ。

「寒いのでしょう? 鼻が赤くなってる」

 姉は首からマフラーを取り、雪夜の首に巻いてやった。

 確かに雪夜の鼻は変色し、小さく縮こまっていた。

 弟は上目遣いで視線を送る。

『お姉ちゃんはいいの?』

 そう言いたそうな表情だ。

『私はいいの』

 静かに、説き伏せるように、姉は薄く笑いかけた。

 しとやかな微笑。

 母に似ている。

 姉はしゃがんで弟の膝を優しく撫でてくれた。

 不思議と、痛みが和らいでいく。

「偉いわね、雪花《せつか》は」

「ああ、もう立派なお姉ちゃんだな」

 両親は満足そうに呟く。

 雪花は、後ろに佇む両親の、慈愛に満ちた視線を受け止める。

 雪は降り止まず、四人の家族を、覆うようにして落ちてくる。

 

   

 

 はっと目が覚める。

 自分がひどく寝汗をかいていたことに気づく。

 スエットの上半身の、脇の部分が、じっとりと濡れている。

 爽やかな朝だというのに、この不快な気分は何だろう。

 ベッドから降りる。

 びしょびしょに濡れている。

 あんな夢を見たくらいで、どうして。

 あんな昔の、すっかり忘れていた子どもの頃の思い出。

 姉の姿。

「雪花」

 今も、小さな少女のまま、時間が止まっている。

「雪花……?」

 眩暈がする。

 今日も全く眠れなかった。

 睡眠の質が悪くて、ずっと魘(うな)されている。

 頭が痛い。

 しかし、考えていても埒が明かないのは、分かっていた。

 雪夜は朝の支度をした。

 

   *

 

 白のワイシャツ、ブレザー、ズボン、濃い青のネクタイ。

「まあ、似合ってるか」

 雪夜は自室を出た。

 ダイニングには、既に朝食を作り終えている母。

 父は出勤中である。

 真っ白いご飯、味噌汁、小さな目玉焼きとソーセージ。

 雪夜は低血圧なので、朝はそんなに食べられない。

 並べられている皿を見ても、何らかの記号のようにしか感じられない。

 ぽつぽつとした黒濁が、三点を結んでいるような、奇妙な図形を想像してしまう。

 椅子に腰を下ろし、ご飯と味噌汁を無理やり喉に通す。

「顔色悪いわね。大丈夫?」

 母が心配そうに尋ねてくる。

「……ん」

 一言しか返さないのはさすがに悪いだろうか。

 けれど、気持ち悪いのだ。

 頭痛が取れない。

 身体が弱過ぎて、話にならない。

 体育の授業も見学で、いきなり倒れ込むことだってある。

(ちゃんと食べてるのに)

 少なくとも、胃の中に食べ物は入っているはずだ。

 と、急に背筋が寒くなるような、激しい拒否反応が胃の中に来た。

 うっ、と、呻いた時には、遅かった。

 口に入れた食べ物が逆戻りする。

 雪夜は、その場に倒れ込んだ。

「雪夜!!」

 母が叫ぶ。

 ゴホッ!!

 出てきたのは、血。汚れた色。

 胃の中の食べ物は無かった。

 赤黒い液体が、ドボッ! と零れる。

「ギャーーーーッ!!」

 母は半狂乱に雪夜の肩を揺さぶる。

『私の息子が』

『私の息子が』

『私の息子が』

『私の息子がーーーーーーーーーーーーーっ!』

「やめてくれ!!」

 雪夜は必死に叫んだ。

 入って来るのだ。

 目に。

『心の眼(メ)』が、異常な色を雪夜に魅(み)せているのだ。

(助けてくれ、雪花)

 姉の名を呼ぶと、

 すう、と消え入るように『心の眼』が閉じた。

 束の間の平穏が、やっと訪れる。

 深く、浅く、息を吸って、吐いて、今度はきちんと瞼を下げる。

 もう一度、大きく深呼吸をした。

(……助かった)

 雪夜は落ち着きを取り戻した。

 部屋の蛍光灯が、いつも通りの色に戻って来る。

「……雪花」

 名前を、言った。

 胸に引っかかっているアクセサリーを握り締める。

 霧が晴れていくような快感。

 雪夜は泣いていた。

 姉がくれた『お守り』が効いたのだ。

 今日も助けられた。

(ありがとう、雪花)

 起き上がる。

「……ごめん、床を汚して」

 虚脱状態に陥っている母に、雪夜は一言、

「学校に行く」

と言い残した。

 

   *独りぼっちのママ*

 リビングのドアを開け、廊下に出た時、母はやはり泣き叫んでいた。

「あの子さえいなかったら」

 母は、自分の産み落とした娘のことが嫌いだ。

 息子のことは好きだけれど。

 雪夜は、どっちの味方にもなれなかった。

 雪花と、母と、父。

 家族のことが好きだった。

 母が、ドアから顔を覗かせた。

 少女のように震えている。

 何て年老いてしまったのだろう。

 まるで老婆のように白髪が乱れている。あれほど綺麗だった黒髪は、今や見る影も無い。

「気分が悪いなら早退していいのよ。とにかく、今日はまっすぐ帰ってらっしゃい」

「……ああ」

 雪夜は笑顔で応えたはずだったが、母の瞼は、重くのしかかっている。

 眉間に縦皺が寄っている。

 どう見ても、許さないつもりなのだろう。

 自分の息子が『あの学校』に進むことを。

 母の消えない憎しみが、見ていて痛かった。

 雪夜はあえて、優しい顔をした。

「母さん、心配しないでいい。俺は大丈夫だよ。何か雪花に関することがあったら、連絡する」

「ああ、本当にすぐ帰ってきて。

 お姉ちゃんのようにはならないでね」

「……うん、わかってる」

 悲しい女だ。

 雪夜は憐れむ気持ちを抑えられない。

(俺は今、どんな目つきをしているのかな)

『心の眼』は、また開いてしまったらしい。

 雪夜は、まだこの不可思議な『チカラ』を制御できない。

 母のすすり泣きが聞こえる。

 音楽のように、耳に入って来る。

 雪夜は思わず『聴いて』しまった。

「お父さんも、お母さんも、もうお姉ちゃんのことは半分受け止めているのよ。

 そもそも、間違いだった。

 あの学校に行かなかったら、失踪することも、いいえ、別の学校だったらって、私、ずっと思っていたんだから。

 そうやって整理をつけてきたの。

 それが今になって、お前は、お姉ちゃんと同じ学校に転校するなんて……」

 母は悲壮だ。

 瞼は、カッ、と膨れ上がり、大きく開いた目からは、ぽろぽろと涙が落ちている。

 母はすぐさま両手で顔を覆う。

「ごめんなさい……感情的になっちゃって」

「母さん。俺は雪花のこともあるけれど、学校そのものに興味があって転入するんだ」

 これは嘘だった。

「前の学校が悪いわけじゃなくて、友達もいたし、でも、あの校舎の外観が、何か、いいんだ。

 駅から遠いのは災難だけど、学校の敷地はすごく広い。

 決して軽はずみな気持ちで転校を決めたわけじゃないさ。

 あの学校でちゃんとやっていく。

 だから、心配しないで」

 雪夜はできる限りの、慰めの嘘を母にかけてやった。

 母は納得してくれたように、頼りなく笑顔を見せる。

「私、情けないわね。息子に心配かけせて……。あなたの鞄を取って来るわ」

 母は安心したように息を一つ吐く。二階へ上がり、雪夜の学生鞄を手に持って、戻って来た。

 母が鞄を渡す。

 雪夜は無言で受け取り、背中を向けて、玄関に逃げた。

 備え付けの姿見が、照明の光の加減で少し斜めに雪夜を映している。

 薄暗がりの鏡に映る自分の姿を見る。

 そっくりだ。

 瓜二つの、顔。

 最近ますます似ている。

 自分たちは、どうしようもなく、姉弟だ。

「可笑しいな、三歳上なのに」

 雪夜は雪花の身長をとうに追い越してしまっていた。

「独り言は止めてちょうだい」

 母が叱りつけた。

「……ごめんなさい」

 雪夜は謝ることしか出来ない。

 母はまた涙ぐむ。

 しばらくすすり泣いた後、リビングへ戻っていった。

「雪花」

 雪夜は独り言を繰り返す。

 姉がくれた『お守り』

 五つ星の、あの神社の、そう、最初は「合格祈願」だった。

「……大人は、ちゃんと子どもの無事と幸福を祈っている。雪花、お前は知っているのか」

 突如、姉に対して憤りのような、憎しみめいた感情が湧き上がる。だがその原因が分からず、仕方なく雪夜は目を瞑った。

 とにかく、始まりの一歩は踏み出したことになる。

 

   *鳥籠*

 雪夜は校舎の玄関の扉を開けた。

 すぐそこに生徒たちの下駄箱が見える。

 木で造られた上質な素材で、しかし使い古された感じがそこかしこに残っていた。この学校はどれくらい昔から建っているのだろう。

 真っ先に職員室へ行くよう指示を受けていた。

 吹き抜けのホールから廊下へ渡り、最も目立つ場所にある部屋の扉を数回ノックする。

 返事が返ってきて、雪夜は扉を開ける。

 入ってみると、どこかの外国映画に出てくるような、まるで暖炉でもありそうな部屋だった。

 上を見ると、他の部屋より電気の質が違うらしく、ぼんやりした蛍光灯が、部屋の雰囲気を橙色に染めていた。

「月城《つきしろ》君、こっちだ」

 これから担任になる教師が手招きしてきた。

 年相応の男性で、中年の体型を隠さず、おおっぴらに表している。

 度量が広そうな男である。

「まあ、最初は誰でも緊張するさ。君のクラスはあっちだな。みんなにはもう説明している。注目浴びるぞ?」

 担任は空気を和ますかのように、雪夜に大らかな笑顔を向けて言った。

「なぜ、注目を浴びるのですか」

 雪夜は素朴な疑問を口にした。

 低い声なので、初対面の人間には、怒っていると受け取られてしまうことがある。

 しかしこの男はやんわりと笑って、快活に答えた。

「そりゃ、転校生は、注目を浴びる存在だろう。

 新しい人間。

 物語の始まり。

 古今東西、みんなそうさ。

 特に君は、女子たちが悲鳴を上げるぞ」

 担任の男は楽しそうに、後ろを歩く雪夜の姿をちらりと見る。

 その視線は、値踏みするような安い卑らしさではない。

 純粋な好奇心から来ている。

 雪夜は『眼《メ》』で分かっていた。

 一年一組のクラスにたどり着く。

 雪夜は一度、軽い深呼吸をした。

 担任が先に教室の中へ入り、「全員、席に着けー」と、やる気の無さそうな声で言う。

「えー、みんなもう知っていると思うが、これから仲間が加わります。優しく迎え入れるように」

 何人かの生徒が空返事をした。

「月城君、入りなさい」

 担任の声が聞こえ、雪夜は一歩、踏み出した。

 一瞬、教室がしんと静まり返った。

 そして間を置いて、どっと賛美の声があふれ返った。

「おぉ! 美人!」

 さっそく一番前の席にいる生徒が、野次を飛ばした。

 いや、彼自身は野次を飛ばしたつもりは無いのだろう。だが雪夜にとっては同じことだ。

 雪夜は、じと、と教室をねめつける。

 クラスの人間を教壇から見渡してみると、女子たちが隣の女子と嬉しそうに内緒話をしていた。瞳を熱く自分の方に向けている。

 その中で、さっそく「気に入らないな」という表情がある。

 主に男子だ。

 同姓にはどうも好かれない性質(たち)らしい。

『山之上《やまのうえ》高校』から来ました。

 月城雪夜です。

 よろしくお願いします」

 散々愛想がないと言われてきた声で、自己紹介をした。

 クラスの騒めきが一層大きくなる。

「あそこ、超名門じゃん」

「何でこっちの学校来たんだろうな」

「問題でも起こしたとか?」

「しかも山之上なんて、目と鼻の先だし」

 男子たちが値踏みするように、雪夜を見ながらひそひそと喋っている間、女子たちはうっとりした眼差しでこちらを見つめていた。

「月城の席はあそこな」

 担任が雪夜の背を押した。

 雪夜は前に進む。

『ようこそ。大神《オオカミ》学園へ。』

 ぴく、と耳を震わせる声が走った。

(誰だ)

 鐘の音が、響く。

 

 キーン、コーン、カーン、コーン……。

 キーン、コーン、カーン、コーン……。

 

 朝のホームルームを知らせるチャイムだった。

 

   第一章へ続く。⇒

 

オリジナル作品のみの扱いです